耐震補強リフォームのポイント
適切な診断と補強で、地震への不安を解消
日本は地震列島と言われるように、地震の多さでは世界でも有数の国です。自宅にいる時に大きな揺れを感じると生きた心地がしない方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな不安を解消するためにも、早めに住まいの耐震性を高めておきたいものです。ここでは、どんな家が倒壊しやすいのか、耐震リフォームにはどんな方法があるのかなどをご紹介します。
※2018年12月現在の情報です。
過去の大地震にみる住宅の倒壊原因とは
気象庁のホームページによると、1年間に世界で発生したM(マグニチュード)6以上の地震の数は、1年間の平均で約150回で、日本およびその周辺で発生するM6以上の地震の1年間の平均は約20回となっています。
阪神淡路大震災では6,434名もの尊い命が一瞬にして奪われました。しかも亡くなられた方の77%は、自宅の倒壊などによる圧迫死となっています。その後も、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震などの大地震が発生していますが、その後の調査により、倒壊する住宅について以下のような共通点があることが判明しています。
地震の発生状況の詳細はこちら(気象庁 地震について)
死者数と死因の詳細はこちら(国土交通省 近畿地方整備局)
壁の量が不足
建築基準法では建物の大きさによって、壁の量が決められています。この壁の量の変更があったのが、昭和56年の建築基準法の改正でした。昭和56年5月31日以前に建てられた建物を旧耐震基準、それ以降を新耐震基準と呼んでいます。新耐震新基準は、「震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」「震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと」が目安になっており、阪神淡路大震災でも倒壊した住宅の多くが新耐震基準以前に建てられたものでした。
壁の配置バランスが悪い
通常、家の南側は採光のために窓が多くなり、北側は水回りが集中するので壁が多く設置されています。建物の中で強いところと弱いところが偏っていると、地震時の建物の揺れが大きくなります。平成12年以前は建築基準法に壁の配置バランスに関する具体的な数値の規定がないので、その頃より前の建物は壁の偏りが大きい可能性があります。
接合部の強度不足
木造在来工法の住宅は強度を保つために「筋交い」という部材を柱と柱の間に斜めに入れます。しかし、地震の際などには、この筋交いが原因で、柱の足元が土台から抜けてしまう現象(ホゾ抜け)が発生し、住宅を倒壊させてしまいました。柱と土台の接合部をもっとしっかりと緊結させておけば防げた悲劇でした。そのほかの柱と梁なども含め、構造部材の強度が不足していると、木造在来工法の住宅は大地震に耐えられません。
白アリ被害や構造材の腐食
木材の腐朽は、水回りが集中する北側に多く見られます。木材の湿気が多くなると、腐朽菌や白アリが発生しやすい環境になってしまいます。どんなに太い柱でもシロアリや腐朽菌でぼろぼろになっていては揺れに耐えられません。
耐震診断で建物の強さを判断
既存の建物について、図面をもとに外壁や基礎のひび割れ状況、床下や小屋裏の環境、内壁の状況などを確認し、国交省監修の「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づき総合評点を出して耐震性能を評価するものが、耐震診断です。これをもとに耐震改修工事の必要の有無を判定します。当社では耐震診断のご相談も承っておりますので、ご連絡ください。
耐震補強のポイント
壁の補強
壁の補強方法は主に2種類あります。柱、梁、土台の間に筋交いを入れた壁を作る方法と、幅の広い強靭な構造用合板を柱、梁、土台に打ちつけて壁を作る方法です。
内装工事などのついでに実施する場合は、家の内側からの補強工事を行います。また外壁の張り替えなどの場合には外側から工事することも可能です。室内側から工事する場合は、壁の中にある柱だけではなく、普段は目にすることのできない天井裏の梁といった建物の構造体もチェックできます。一方、家の外から工事する場合には、室内での生活を続けながら耐震リフォームを実施できるというメリットがあります。
接合部の補強
耐震補強を行う際に、最も重要な部位の一つは、基礎と土台、土台と柱、柱と梁などの構造の接合部です。接合部は耐震金物やアンカーボルトなどで、しっかりと緊結されますが、新築時の施工が不十分だったり、必要な本数が不足していたりすると、効果を発揮することができません。木造在来工法の住宅は、壁、柱、梁といった各部材が一体となることで地震に対する強度や粘り強さを持つことができます。
土台や床下の改善
土台は、家の基礎と柱をつなぐ部位。ここに家の全荷重がかかるので、耐震補強をする上でも大変重要なポイントになります。土台に腐朽やシロアリ被害がある場合には、部材の交換などの補強を行います。さらに、そうした劣化を防止するため、床下に炭や調湿材を敷設したり、防湿シートや防湿基礎の打設などを行ったりして、床下から湿気が上がってくるのを防ぐ処理をすると効果的です。また、外壁や設備からの漏水が原因の場合もありますので、床下点検だけではなく、総合的な調査が大切になります。
屋根の軽量化
重量のある瓦を軽量な材質に取り換えることも、耐震性の向上に有効です。重量のある瓦屋根から、軽量の金属屋根に替えるなど屋根の軽量化を図ると、家の躯体にかかる負担も軽減されます。屋根を軽くすることで、耐震性を損なわない程度に柱や壁を減らし、リビングを広くするなど開放的な住まいを実現することも可能となります。
基礎の補修
基礎は、躯体を地盤面に据え付ける部位です。基礎にヒビ割れなどが入っていては、壁や柱などを補強してもその効果が十分に発揮されません。その基礎を補修するには色々な工法がありますが、代表的な工法を紹介します。ヒビ割れが生じている場合には、該当箇所に樹脂を注入して補修する方法。もう一つは、既存の基礎の外側に、鉄筋コンクリート造の基礎を新設し、一体化して補強する方法です。また、最近では高速道路の橋脚やトンネルの天井部の耐震補強にも使用されるアラミド繊維を巻き付けて補強する方法もあります。
改修費の目安
日本建築防災協会が出している耐震改修工事の概算費用の算出方法は以下のとおりです。
例:評点0.5の住宅を1.0に上げる費用の目安は、
162万円=27,000円×(1.0-0.5)×120m2
減税と補助について
負担の軽減と耐震リフォームの推進を目的に、国や自治体から税制面の優遇措置や補助金などのバックアップが受けられます。税の優遇措置は複数の制度があるので、有利な方法を選びたいものです。補助制度については、多くの地方公共団体で耐震診断・耐震改修に対して補助を実施しています。詳しくは各自治体ごとにご確認ください。
制震と免震
熊本地震では震度7の揺れに繰り返し見舞われたことから、近年の家づくりでは複数回の揺れにも耐える構造を目指す傾向になってきています。そこで注目されているのが、「制震」と「免震」です。
構造をしっかりと補強する地震に耐える力を家に持たせる「耐震」に対し、地震の揺れを吸収して構造にかかる負担を軽減するのが「制震」。また地盤と建物の間にクッションとなる装置を入れて揺れを直接伝えないようにするのが「免震」です。
免震は地盤と基礎に手を加えるのでリフォーム向きではありませんが、制震技術を用いた金物や耐震装置などは構造補強の際に設置することが可能な製品もあります。
耐震補強のまとめ
住まいは、家族が過ごす大切なものです。その住まいが凶器となって、大切な人の命を奪うことは、絶対にあってはならないことです。ぜひ、ご家族でお話し合いをして、診断・改修工事をご検討をください。耐震補強は専門的知識も必要になりますのでぜひ当社ご相談ください。